大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和62年(行コ)5号 判決 1989年1月30日

香川県高松市亀井町一〇番地の一〇

控訴人

株式会社高松大映劇場

右代表者代表取締役

詫間敬芳

右訴訟代理人弁護士

立野省一

中村史人

香川県高松市天神前二番一〇号

被控訴人

高松税務署長

久次米直義

右指定代理人

佐藤公美

萩原義照

香川竹二郎

新田旭

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  控訴の趣旨

(一)  原判決を取り消す。

(二)  被控訴人の控訴人に対する

(1) 昭和五九年三月三〇日付、特定の資産の買換えの場合における特別勘定の設定期間延長承認申請を認めない旨の通知処分

(2) 昭和五九年四月二三日付、控訴人の昭和五七年五月一日から昭和五八年四月三〇日までの事業年度分の法人税にかかる更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分

(3) 昭和五九年四月二三日付、控訴人の昭和五八年四月期分の法人税についての更正及び過少申告加算税の賦課決定

(4) 昭和六〇年六月三日付、控訴人の昭和五八年四月期分の法人税についての過少申告加算税の賦課決定を、いずれも取り消す。

(三)  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨。

二  当事者の主張

次に、当審主張を付加するほかは、原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する。

1  控訴人

(一)  控訴人の本件第一申請の取下は、右申請を取り消す旨の意思表示であるが、控訴人は不備な点があれば法定の期間内にこれを補正し、必要資料を追完する予定で、右取消の意思は全くなく、被控訴人もこれを知つていた。右取下は税法・税務に無知な控訴人がいずれもそれらの専門家である被控訴人及び右申請行為を委任した公認会計士らの指導及び助言に従つておれば間違いないものと誤信してなしたもので右は錯誤による無効のものである。

(二)  控訴人の右錯誤は、被控訴人及び公認会計士の指導・助言に従つたものであるから、控訴人に重大な過失はない。

2  被控訴人

(一)  右1の(一)の事実は否認する。

控訴人が被控訴人に対し、本件第一申請書を提出した当時、買換資産として建築予定の建物については構想ないし抽象的計画の段階で、右申請書の各記載事項が全く具体化してなく、右申請に基づく延長すべき具体的な取得指定期間の認定を受けるための実質的要件を備えず、近日中にこれを具備して補正できる状態になかつたので、後日これを具備するに至つたとき改めて申請することとして、右第一申請を取り下げたものであり、右申請を保留する意思はなかつた。このことは、右取下書(乙第二号証)の文言及び同書の提出に際し、本件第一申請書の返還を受けていることからも明らかである。控訴人は本件第一申請が延長すべき具体的な取得指定期間の認定を受けるための実質的要件を備えてないことを正しく理解して右申請の取下をしたもので、錯誤の存する余地はない。

(二)  仮に控訴人にその主張の錯誤があつたとしても、本件第一申請の取下が保留の意味を有するなどと考えるのは常識に反するものであつて、控訴人には重大な過失があり、右錯誤の無効を主張できない。

三  証拠関係

原審記録中の書証・証人等各目録及び当審記録中の証人等目録各記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴各請求はいずれも失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次に補正し、付加するほかは、原判決理由説示と同じであるから、これを引用する。控訴人の当審立証をもつても右判断を左右しない。

1  原判決二七枚目表一・二行目の「昭和五七年七月二〇日」を「昭和五七年七月三〇日」と訂正する。

2  控訴人の当審主張(一)はこれを認めるに足りる証拠がない。右主張は、被控訴人の当審主張(一)の理由によつてこれを否定するのが相当である。原・当審における控訴人代表者本人尋問の結果中には右控訴人の主張にそう供述部分があるが、右は原審で採用の各証拠に照らし措信できない。

そうすると、控訴人の当審主張はその余の判断を待つまでもなく採用できない。

二  よつて、右と同旨の原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高田政彦 裁判官 孕石孟則 裁判官 市村陽典)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例